
これまで何度かアドラー心理学をもとにした教育方法を紹介してきましたが、この辺でそろそろ整理のためにまとめておきたいと思います。
過去記事:
わたしが日常生活で教育について一番頭を悩ませるのが、「こうしてほしい」と思った通りにしてくれない場面です。
おそらく多くの親御さんも同じなのではないでしょうか。
このような場面に遭遇した時に、親が取るべき思考法を考えてみましょう。
① あなたの「こうしてほしい」は正しいか?
「こうしてほしい」はどこからくるのでしょうか。
教育とは、子供の未来から逆算して今覚えてほしいと思うことを、先に経験させるための活動です。
すなわち、未来に根ざしていなければなりません。
例えば、「人と会ったら挨拶をしなさい」は、将来初対面の人にも気兼ねなく挨拶ができるような大人になってほしい、からきているかもしれません。
挨拶は人と人とのコミュニケーションのきっかけですので、ロボットが活躍する未来でも人間同士のコミュニケーションが存在する限りは重要な、普遍的なスキルではないでしょうか。
では、「ちゃんと宿題をやりなさい」はどうでしょうか。
ちゃんと宿題をやる子供になることで、将来いい大学に入って安定した職業に就いてほしい、でしょうか。
しかし今の世の中ですら、いい大学に入ったからといって必ずしも安定した企業に就職できるわけではありません。
そもそも、名だたる大企業が破産申告やリストラ敢行する昨今、を「安定した企業」なんていうものはもはや幻想になりつつあります。
または、「いい大学に入って安定した企業に就職した子供を育てた自分」を他人に自慢したいだけではないでしょうか。
このように、自分が設定した「こうしてほしい」が本当に子供の将来に根ざして設定された課題かどうかは、自分の中で検証を繰り返す必要があります。
未来は誰にも予想できないものですので、何が正しいかはわかりませんが、第三者目線で検証するということ自体が重要です。
② 自然の結末を経験させる
「こうしてほしい」が意義あるものだと確信がもてたら、それを子供に説明できるはずです。
「夜6時には夕食の準備をするから家に帰って来てね。時間を守れることは大切よ。」などですね。
では、これを子供が守らなかった時にどのような措置を取ればいいでしょうか?
子供には、夜6時に家に帰るのは「夕食の準備をするため」だと伝えました。
だから、夜6時に家にいない場合は子供の夕食の準備ができない、ということになります。
したがって、この約束の自然の結末は『夜6時までに家に帰らなかったら、夕食はなし』です。
これを本当にやったらどうなりますかね。
おそらく子供は「え……本当に……?」という感じに驚くのではないでしょうか。
そしてその日は空腹に悩まされ、自分が時間を守らなかったことの帰結であることを強く感じます。
でも別のシナリオも考えられます。
夕食なしは、少しかわいそうだなと思って「夜6時までに家に帰らなかったら、お風呂掃除をすること」という結末を与えたとします。
しかしこの場合、『夜6時までに帰ること』と『お風呂掃除をすること』の間には関係がありません。
なぜ夜6時までに帰らなかったらお風呂掃除をしなければならないのでしょうか?
例えば夜22時に帰って来たら、もっと早くお風呂に入りたい家族が他にいて、おそらくお風呂掃除は済ませてしまっているはずです。
だから、子供は約束と関係ないことをさせられていることに気づきます。
そして、この約束の内容と関係のないことをさせられた場合、罰を与えられているという気持ちを強くもつようになります。
この罰を与えられている、という感覚には勇気をくじく作用があります。
『ボクはダメな人間なんだ……』と彼らに思わせることは、教育上なんらプラスの効果をもちません。
③ ほめない、しからない、教えない
次に、相手を導く5段階の境界線を意識した対応をとります。
前回の記事でも紹介しましたね。
過去記事:ほめない・しからない教育のために注意すべき5つの境界線。
アドラーの推奨する第2、第4の境界線まで留めておき、上下関係が発動しないように気をつけます。
先のお食事の例であれば、
「アラ、遅かったわね。今日は○○ちゃんの好きなハンバーグだったから、食べて欲しかったのに残念だわ(境界2)」
か、それに加えて
「明日は夕方のサイレンが鳴ったら家に向かったらどう?(境界4)」
などです。
④ 課題を分離する
上記のことを伝えるときは、決して嫌味っぽくならないよう、ポジティブにさらりと伝えられることが重要になってきます。
でもこれってなかなか難しいのですが、なぜでしょうか。
それは、子供との間で課題の分離ができていないのです。
『子供が夕食を食べられなかったら、お腹が減ってつらいだろう』と思うからこそ、どうして帰って来てくれなかったのかと感情的になってつい強く言ってしまったりします。
しかし、お腹が減ってつらいのは親ではなく子供自身なのです。
お腹が減ってつらいのを親が解消してあげようとすることは、子供の課題と親の課題が分離できていないことになります。
世間的には子離れできない親というような言い方をされる現象です。
この場合の親の課題は、子供が夜6時に何としても帰ってきたくなるような魅力的な要素を事前に伝えられていなかったことになります。
例えば、朝に「今日はスーパーのお肉が安いから、夕飯はハンバーグにしようかな」と伝えておくなどです。
まとめ
おそらく一度で全部できることはないでしょうから、日々思考をかさねて「どうしてうまくいかなかったのか」を考えることが大切ですね。