
あなたは褒めて伸びるタイプ?怒られて伸びるタイプ?
なんて質問を大人になってからもよくしますよね。
まぁ、血液型占いのようなものです。
でも子育て世代にとっては大真面目な問題です。
子供をどこまで褒めて良いのか、どこまで叱ってよいのか、試行錯誤の連続です。
ちょっと前にも制裁をテーマに記事を書いてます。
そんな悩み多き親たちに、またしてもアドラーが知恵を授けています!
その答えはなんと、ほめてもしかってもいけない。
そ、そんな……
ほめるとしかるは上下の関係
ほめるのとしかるのは真逆の行為なのですが、立場が上の者が下の者にすることという点ではどちらも一致しています。
立場が上の側が設定した基準に対して、期待を上回ったら褒める、下回ったら叱る、ということです。
よく思い返してみると、褒められたのになんかムッときた感覚って感じたことはないでしょうか。
つまり、良いことと思われがちな褒めるという行為も、褒めている側が立場が上だという前提の元に成り立っている上から目線の教育であることに注意しなければなりません。
一方でアドラーが推奨するのは上でも下でもない、横から目線の教育です。
相手との距離をはかる5つの境界線
はめない・しからないと聞くと、「放っておけということですか!?」と思いがちなのですが、そうではありません。
この横から目線というのは非常に繊細なため、これから紹介する5つの境界線を意識して守ることで、その距離を保つことができるようになります。。
例として、子供がふざけて母親の頭を叩いたというケースを考えてみましょう。
-
境界1:事実の確認
「あっ、今叩いたね!」と起きた事実を確認する反応です。それ以上何も言いません。
この対応が放任に近いものなのですが、アドラーはこれでもよいと言っています。
実は、この反応が最も相手に求めるハードルが高く、相手を信頼していないとできないリアクションなのです。
その後の行為の評価と解決策の提示を全て相手に求めています。子供がその問題に気づけば、最も成長の機会があるとも言えますし、気づかなければ成長の機会は失われます。
-
境界2:主観の表明
「あっ、今叩いたね!」のあとに、「痛いよ〜」と言ったり、悲しんでいる風な表情をするなどといった反応方法です。
行為を受けた側が感じたことをただ表明するということで、そこに善悪の判定は伴いません。
主観の表明にはすべて「私は」という主語がつけられることが特徴です。
相手に気づいてもらい易いように、1に感情をつけ加えた形になります。
この褒め方で非常に有名なのが、小泉純一郎元首相の「痛みに耐えてよくがんぱった!(私は)感動した!」の一節です。
-
境界3:行為の評価
「あっ、今叩いたね!痛い。よくないよ!」という感じに、最後に「あなたは」で始まる相手の評価軸を加えた形の反応です。
この辺りから、徐々に相手の領域に踏み込んで行きます。
周辺に被害が及ぶ場合に注意深く実施するのがよいとされます。
問題がある行動をした、という評価を直接相手に伝え、そのあとどうすれば解決できるのかの部分を相手に考えさせます。
-
境界4:解決の促し
「あっ、今叩いたね!痛かった」の後に、「仲直りしたいけどどうしたら良いと思う?」などと問題解決の方向性を示します。
ここでは仲直りすれば問題は解消されるという一つの解決軸を提示しています。
それを実行するのかどうかの判断と、どうやって仲直りを実現するのかのアイデアは相手に求めています。
このラインが、アドラーが推奨する教育法の最終ラインとなります。
モンテッソーリ教育においても、掲示と呼ばれる教育の軸となる重要なメソッドになっています。
-
境界5:命令を発する
「あっ、今叩いたね!謝りなさい!」という、世の中で一番ありふれた反応方法です。これはもう横の関係ではなくなっていて、上下関係の中にあると言えるでしょう。
多くは人を叩いて平気な顔をしていられるような大人になって欲しくない、という想いから発せられる言葉ですが、時としてただ腹を立てているだけというケースも多いと思います。
そしてその親の想いとは裏腹に、「人を叩く」と「謝る」が直結してしまって、どうして謝らなければいけないのかという問題と解決策の間の因果関係がすっぽり抜け落ちてしまいます。
おそらく残念なことに、これで完成するのは人を叩いたらとりあえず謝ったフリだけする大人だということに注意しなければなりません。
まとめ
随分と回りくどいように感じますね。
そう、横の関係はとてもハードな関係なのです。
なにせ、大人同士の関係と同じなわけですから教える側も大変です。
そういう意味で、上下関係というのは教える側にイージーな関係であると言えるでしょう。
アドラーの推奨は「境界2:主観の表明」か「境界4: 解決の促し」です。
小さい子供であればあるほど、解決の促しの比率が高くなると思います。
実は、この考え方は先生と生徒の関係や、上司と部下の関係にも応用ができるんだそうです。
自分が誰かに何かを教える立場になった時、横からの5段階のアプローチに注意してみましょう。