今更ながら仮想通貨についてその歴史や原理をざっくり勉強したので概要についてまとめておきたい。

仮想通貨のイメージ

仮想通貨と言えば連想するのはビットコインだ。ただ、ビットコインというと詐欺で逮捕者が出たり、数十億円という単位で盗難が発生したりするニュースばかりで、庶民からはあまりよいイメージは持たれていないと思うし、自分もそう思っていた。ただ、調べていくうちにそのもの自体は”壮大な技術者たちの夢”とでもいうべき代物であり、その未来に健やかなるロマンを感じる。使い古された言葉だが、「要は使う側の問題」ということで、悪いニュースの発端はその革新的な技術や知識を悪用して他人から金をせしめようとしている輩が原因であって、技術に罪はないようだ。

仮想通貨とは

仮想通貨を定義するのは難しいが、概ね「特定の国家が発行するものでない通貨」と言うのが当てはまると思った。仮想なんだから物体として存在しないものだ、と思いやすいのだが、Suicaなどの電子マネーなんかも物体としては存在していない点では同じである。また、ブロックチェーンの仕組みを知っていると、「管理主体が存在しないのが仮想通貨では?」とも思うのだが、リップルのような管理主体が存在する仮想通貨もある。以上、どういう定義を仮想通貨とするかの判断は難しいのだが、現状では誰が数えたかわからないが600種類以上の仮想通貨があると言われている。その元祖がビットコインであり、今最も利用者が多い仮想通貨だ。

仮想通貨の誕生

仮想通貨はどうやって生まれたのだろうか。最初の仮想通貨はビットコインなので、ビットコインの誕生ということになるのだが、この発明者はサトシ・ナカモトという人物だ。日本人なんだ!と最初は驚いたのだが、どうも実際に実在する人物なのか特定できていないようだ。外国人かもしれないし、何人かのグループなのかもしれない。これまでに何人もの人物が「自分がナカモトだ!」と名乗り出ているらしく、推理小説のようで面白い。ともかく、このナカモトが2008年から暗号化技術関連の技術者に向けて論文を発表し始めたのが始まりらしい。ナカモトが誰なのか、気になるところではあるのだが、個人的にはこのまま身元不明のままであっていてほしいと思う。お金というものはやはり利害関係が絡むものであるので、その出自が特定できるとなると、意図的にどこか落とし穴を設けているのではないかと勘ぐってしまう。

ビットコインの中核技術

初代仮想通貨であるビットコインは大きく分けて3つのコアとなる技術から成り立っている。世の中に数多ある仮想通貨は基本的にはこのビットコインの弱点を補おうとしてコピーされたものが殆どなので、中核の技術はここに凝縮されているといっても良いと思う。以下の3つだ。

  1. 電子署名
  2. ブロックチェーン
  3. プルーフオブワーク

一つ目の「電子署名」は、すでに広く用いられている既存技術だ。主にメール送信時のデジタル署名なんかに使われている。秘密鍵と公開鍵という2つの鍵を用いて情報を送る際に暗号化し、受信者が正しく復号することができるようにしている。ビットコインにおいては、送金をする際にその情報のなりすましや改ざんを防ぐ目的で使われる。

二つ目の「ブロックチェーン」は世界中で行われたビットコイン取引の全てを記録した帳簿のようなものを指す。一定時間内の取引をブロックと呼ばれるカタマリに記録して、ブロックチェーンを構成するネットワークに参加している全てのコンピュータにこれを持たせる。そのブロックが一定時間おきにどんどん繋がって鎖のようになっていくからブロックチェーンだ。どうしてこんな方式をとっているかというと、管理主体がいない状況下で通貨の二重使用を防ぐためだ。二重使用とは、例えば1万円持っているAさんがBさんに1万円を支払って商品を購入した後、また同じ1万円をCさんに払って違う商品を購入できてしまうことだ。現実世界ではこれは起き得ない。AさんがBさんにお金を支払った時点で、手元から1万円はなくなってしまうからだ。しかし、電子の世界では全ての情報は容易にコピーできるため、これが可能である。電子マネーでそれができないのは、例えばJRのような管理主体が取引者同士の間に入って不正がないか監視しているからだ。一方ビットコインには管理者がいない。そこでブロックチェーンを用いて、例えば1,000台のPCが参加しているネットワークだったとしても、うち1台が不正をしようとしても残り999台はその取引と違う結果を持っているので、結果的に不正な取引だということがバレてしまうのである。とは言え、もの凄いパワーをもって1,000台のうち大部分を不正してしまうことが可能かもしれない。そこで登場するのが3つ目の技術、プルーフオブワークである。

最後、三つ目の「プルーフオブワーク」は、前述の不正を働こうとする者に不正を働く気を無くさせるというなんとも不思議な仕組みだ。ブロックチェーンのブロックが一定時間おきに追加されるというのを上で述べたが、この追加の方法に課される手法をプルーフオブワークという。ブロックを追加する際、ブロックチェーンのネットワークに参加するコンピュータたちは、ある簡単な計算問題を課される。これを最も早く解いたコンピュータがブロックを追加することができ、かつ報酬としてビットコインを得られるのである。この方法の狙いは、頑張って何台ものコンピュータに不正を働くよりも、真面目にビットコインに参加した方が報酬が高いという状況を作ることにより、不正を働く気を無くさせるということなのである。銀行強盗に入るのは、犯罪者にとっては簡単に多くのお金が手に入るからであり、もっと簡単にお金が手に入る方法があれば誰も銀行強盗をしない、という人間心理をうまく利用したものである。

まとめ

仮想通貨の誕生とその代表例であるビットコインを構成する技術について、簡単に紹介したが、ここまで読んでもなんでそんなに騒がれるのかわからないだろう。ちらっと出てきたが、「管理主体がいない」というのが非常に強力であり、これまでは通貨というのは全てある特定の国家に依存した代物であった。なので、国の中枢に近い政治家やその周辺に情報や利権が集まり、格差を生みやすい構造となっていたのだが、ビットコインに代表される仮想通貨はそれを打ち破る可能性を秘めている。打ち破られる側にとっては仮想通貨は極めて邪魔な存在であり、これからも偏向報道は続くと思われる。それらに触れる我々庶民にとって重要なのは、仮想通貨の根幹をなす技術が破られたのか、単に外部の誰かが悪事を働いただけなのかをよく見分けることだろう。