
本日からモンテッソーリ教育講師養成講座のスクーリングがはじまりました。
真夏の8月に休日返上ぶっ続けで足掛け8日間の講座が開かれます。
高校生の頃の夏期講習を思い出しますな。
外部リンク:モンテッソーリ教育綜合研究所 – 講師養成通信講座
ちなみにわたしは0-3歳コースの方を選択しています。
会場の様子
スクーリング会場は五反田のTOC。都心にあるわりには昭和の香り漂う古めかしいビルです。
初日はオリエンテーション含め、3つの理論講座が設定されています。
参加者は0-3歳コースと3-6歳コースをあわせてだいたい200名くらいでしょうか。
思ったより盛況です。
9割がた女性です。保育・教育関係か、子供を持つ親御さんですかね。
モンテ概論
初日は理論講座がメイン。座学です。わたしが重要と思ったポイントを紹介していきます。
モンテッソーリメソッドの成り立ち
約110年前に医師であったマリア・モンテッソーリがイタリアのローマで立ち上げました。
最初は知的障害者、貧困層の子どものような弱者のために考案された方法論であったことが重要なポイントです。
知的障害をもつ子どもたちに教育を施したところ、健常児を上回る発達を見せたことから注目され、世界中に広がりました。
先進国ですと、富裕層が中心に取り入れているイメージがありますが、今でもアフリカや中南米など貧困国が多く存在する地域での導入も多いです。
日本でも近年問題になっている、教育格差を埋める手立てとして世界中で古くから使われてきました。
スタイル
モンテッソーリ・メソッドは、科学的分析に基づく方法論です。
精神性や宗教、文化教育なども登場しますが、アプローチ自体はすべて科学を根拠としています。
子どもに対する接し方がすべて、筋道立てられているか(論理性)、誰が見ても納得できる考え方か(客観性)、事実に基づいて立証できるか(実証性)が伴っていることを拠りどころにしています。
対象年齢
モンテッソーリの教育理念は生涯にわたって通用するものと言われていますが、メソッド自体の対象年齢は0-12歳までが設定されています。
環境の提示というある程度型をつけたアプローチをとるので、それ以上の年齢には不確定因子が多すぎるのでしょう。
なお、成人としての基本的人格が完成されるのを24歳と指定し、以下のように4つの段階に分けて定義しています。
- 第1段階:0-6歳 幼年期 変容期
- 第2段階:7-12歳 学童期 第一の安定期
- 第3段階:13-18歳 思春期 変容期
- 第4段階:19-24歳 青年期 安定期
基本的には第1段階の幼年期に対するノウハウが中心です。
幼年期の中の分類
幼年期はさらに、0-3歳までの前期と3-6歳までの後期にわかれます。
これらの間に大きく横たわる違いは、物事を吸収する際の無意識と意識の差です。
0-3歳の前期は、無意識の割合が強く、興味をもったものをいとも簡単に習得します。
多言語の発音や絶対音感など、大人が一生かけても習得できないスキルを1年足らずで習得してしまうのもこの時期です。
しかし、この習得の際にはその対象をなんなのかわからないまま習得します。
つまり、Aはエーと読む、レの音はこれ、というのをそのまま吸収し、それに意味を見出そうとしません。
この能力が逆を行ってしまえば、悪い習慣もなんの苦もなく習得することができ、それは一生つきまとうということになります。
3-6歳の後期は、意識の割合が優勢になってきます。
吸収する対象に対して「これはなんなのか」という整理と秩序だてを行いながら習得します。
意味付けを必要とすることから、習得にあたって子ども自身に努力が必要となってきます。
習得コストが上がってくるわけですね。この傾向はずっと大人になってからも続きます。
敏感期
敏感期というのはモンテッソーリ教育独自の概念ではなく、生物学の用語です。
学術的には以下の通りに説明されています。
ある生物の発達段階に見られる特殊な感受性。
この感受性の対象となる要素が環境内に存在すれば、生物はその要素に向かって衝動的に引き付けられ、集中的に関わろうとする。
そしてその対象をいとも簡単に吸収する。
ちょっと分かりにくい表現ですが、その時々に応じて強く興味を惹かれる対象が存在していて、それをその時期に差し出すときわめて早いスピードで習得できるという特徴のことです。
この感受性の対象となる要素を適切な時期に、適切なやり方で提示するというのがモンテッソーリ・メソッドのノウハウになっています。
なお、0-6歳で発露する敏感期には以下のようなカテゴリに分けられます。
- 言語:人が話す言葉や文字(0歳~)
- 秩序:場所や順番に対するこだわり(0-3歳に顕著。3-6歳では徐々に失われる)
- 運動:自立に必要な動きの獲得(0歳~)
- 感覚:五感の刺激に対する興味(2歳半頃~)
- 数:数字や量を数えることへの興味(3歳頃~)
- 文化:ことばや数以外のもの(3歳頃~)
大人の役割
モンテッソーリ教育においても、大人は教育者として振る舞いますが、それは義務教育で見られるような指示型の教育姿勢ではありません。
子どもがある技能を習得したい、と思った時にそれを導くのが大人の役割になりますが、その振る舞いはまるで主人に使える召使いのようなものです。
リーダーシップ論でもよく語られる、サーバント・リーダーシップのイメージに近いものがあります。
学習の主役はあくまで子どもであり、大人の役割は「環境の整備」と「正解動作の提示」の2点だけです。
これに続く、「選択(やるやらないを決める)」「学習(集中して取り組む)」「習得(完了の判断)」は子どもに託されます。
子ども途中で投げ出してしまっても、大人は介入しません。「彼にはまだ早かった」と理解し、黙って教具の片付けを促すのみです。
観察のスキル
環境の整備で重要なのは、子どもの興味をひくものを用意するということです。
つまり、大人が用意する環境の中に感受性の対象となる要素が含まれていることが必要です。
その子が何に興味を持っているか、それを洞察するためには子どもの振る舞いをつぶさに観察し、科学的に分析しなければなりません。
例えば子どもの以下のような行動を見たとき、どのように解釈できるでしょうか。
例.1歳の幼児が、ティッシュ箱からティッシュを取り出し、箱が空になるまで続けている。
× 誤った解釈:大人を困らせて、注意をひこうとしている。
◯ 正しい解釈:ティッシュをつまむ指の筋肉の動作、引き抜く腕の筋肉の動作を繰り返し練習している。
誤った解釈は、『1歳の子どもは、ティッシュが散らかる=行儀が悪いことという因果関係を知らない』という事実が、大人の知識の中に欠けていることから生じています。
子どもは、大人と同じ見た目で同じ言葉を話す、別の世界の生き物であるということを大人が理解しなければなりません。
これは、科学者が日々求められている、常識を疑うというスキルに他なりません。
提示のスキル
子どもが興味をひく教具が用意できたら、正解の動作を提示します。
この時重要なのは、ゆっくりと、ロボットのように動作を分解して見せるという点です。
例えば、「コップに水を注ぐ」という動作は以下のような手続きに分解できます。
- 水の入った方のグラスに手を伸ばす
- グラスをつかむ
- グラスを水平に持ち上げる
- グラスを空のコップまで水平に近づける
- グラスの注ぎ口を、コップの上の位置に合わせる
- コップに触れないように、グラスを傾ける
- 適量になるまで静止する
- 適量になったら、グラスの傾きを戻す
- グラスを元の位置に置く
これら一つ一つの動作をゆっくりと、手続き的に紹介することが必要です。
主要な成果
モンテッソーリ教育の経験がある著名人は以下のような方々がいます。
特にアメリカではモンテ教育が盛んですが、富裕層だといくつもの教育メソッドを掛け持ちしている可能性もあるので、一概にモンテだけの成果と言えるかどうかはわかりません。
- バラク・オバマ(合衆国元大統領)
- ヒラリー・クリントン(元国務長官)
- ビル・ゲイツ(Microsoft創設者)
- ジミー・ウェールズ(Wikipedia創設者)
- ラリー・ペイジ&セルゲイ・ブリン(Google創設者)
- ジェフ・ベゾス(Amazon.com創設者)
- マーク・ザッカーバーグ(Facebook創設者)
- ジョージ・クルーニー(俳優)
- 藤井聡太(将棋棋士)
まとめ
概論では、モンテ教育全体をざっと紹介した感じですね。
メソッドの特徴的なところは、観察のスキルと提示のスキルで、その背景としていくつもの科学的分析や医学的根拠が存在しているといった感じです。
ただ、もっとも重要かつ難しいと感じるのが、いかに自分の常識を捨てて、子どもの世界の目線で物事を観察できるかではないかなと感じます。
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