モンテッソーリ教育講座5日目です。

このあたりから、徐々にペースにも慣れてきて、講座の内容も座学から実習中心になってきます。

 

4日目以前についてはこちら

モンテッソーリ教育講座1日目。モンテ概論。

モンテッソーリ教育講座2日目。0歳から3歳の発達。

モンテッソーリ教育講座3日目。環境と大人の役割。

モンテッソーリ教育講座4日目。運動の敏感期。

 

 

日常生活の練習

運動に関する動作は粗大運動と微細運動に分かれましたが、これらを統合して完成させていくための過程が日常生活の練習です。

日々にある生活の中から粗大運動や微細運動の要素に必要な動きを切り取り、ある程度定まったパッケージとして子どもに提示します。

ただし、日常生活の練習はその切り出した工程が重要なのではないです。

例えば、モンテッソーリの日常生活の練習の基本動作の中に「花を活ける」という工程がありますが、必ずしも絶対花を活けなければいけないわけではありません。

その一連の動作の中に存在する運動の機能を、わかりやすく子どもに提示することが重要なわけです。

つまり、日常生活の練習のその本質は、提示の技法の中にあると言っていいでしょう。

 

種類

とはいえ、モンテッソーリの教育の中にある基本の日常生活はお伝えしておいた方がいいと思いますので、内容は述べませんが代表的なものを列挙しておきます。

大人の方ならだいたい動きは予想がつくでしょう。

 

  • つくえを拭く
  • 洗濯をする(洗濯板で)
  • 食器をあらう
  • 花を活ける
  • 植物の水やり
  • 葉を拭く
  • ほうきで掃く
  • 窓を拭く
  • じゅうたんを敷く
  • はさみで切る
  • のりで貼る
  • 糸で縫う

 

提示の技法

モンテッソーリ教育に特徴的なのは提示の技法です。

その理想的な動きは、大人からしてみると「ここまでやるか!」と言えるレベルにまで動作をわかりやすく、かつ子どもに気を遣って見せてあげます。

時間的な余裕と、心の余裕双方が必要になってきます。

どれも当たり前と思えることですが、それを徹底的にやるというのが特徴的です。

 

声がけ

子どもに黙って動作をすることをしません。

「今から◯◯をやるよ」「みててね」「できたね」

こういったシンプルな問いかけを一つ一つの動作に対して徹底して行います。

言葉がわからないからといって、黙って手順を進めてしまうのは子どもに対して失礼にあたる、という敬意の現れでもあります。

また、今からする動作や扱う物の名前を吸収させるという、言語教育の側面もあります。

 

アイコンタクト

声にならない声、とでも言いましょうか。

アイコンタクトやうなづきなど、言語以外のコミュニケーションも動作の節目で必ず行います。

子どもが動作に集中しているかどうかを確かめるために必須の行動です。

 

ポジションどり

基本的には、子どもを左側にします。

手を使った動作が多いので、子どもが右利きの人の手のひらの動きがよく見えるように、ポジションに気をつけます。

また、体以外でも子どもの視界を遮るものを視線の先に置いたりもしないように注意します。

 

超ゆっくり、ひとつずつ

動作はものすごくゆっくりやります。

かつ、一つ一つの動作を独立させて、それぞれに注意が集まるようにします。

理想的には指一本動かす単位でひとつの動作に切り出します。

ここまでやると、「ペンをもつ」という動作ひとつとっても5つくらいに分解されます。

 

サイズ感を意識する

大人の手なら片手で持ち上げられてしまうようなものも、1/5くらいの大きさしかない子どもの手では、持つのが難しかったりします。

そのため、子どもが持ったらどうなるだろうか、というところにイメージを働かせて、あえて両手で持つ動きにしたり、改変を行います。

そのため、普段自分が行なっている動作と違う動きになったりするので、大人にとっては非日常の動きになることもあります。

 

小さな危険を伝える

ナイフやフォーク、はさみや針など、怪我をする可能性があるものを扱う場合はその危険を伝えます。

大人であれば伝えるまでもない内容でも、子どもには危険性がわからないという前提にたって、一つずつ丁寧に教えます。

 

相手に対して最適化する

すでにその提示の一部ができる子もいます。

だから、いつも同じ提示になることはなく、相手となる子どもを事前によく知っておき、その子ができる動作は飛ばしてやるとか、ときにはその子に一部やらせてしまうこともあります。

 

子どもの意思を最優先

まだできない、と思って提示していても「やる!」と言ってくる子はよくいます。

なんですが、それを否定しません。

できなくてもいいのでその意思を尊重してやらせてみます。

もしもできたらもう提示は必要ないですし、できなかったらまた次の機会に提示すればよいわけです。

子どもが自発的に学ぶ意思を表明したら潔く引き下がります。

 

子どもの学びにフォーカスする

その動きを通して、将来子どもに何を学んで欲しいのかを教師は明確にイメージできていなければなりません。

例えば、何かを3本の指でつまむとき、指が物に触れる順番は色々あります。

どれが正解という訳ではなく、例えば今は将来ペンを持つ指の形を教えたいから、ペンを持つ時と同じ順番で指を添える、というようなことを意識します。

 

まとめ

日常生活の練習というよりは、ほぼ提示の説明になってしまいました。

ですが、それくらい提示というのはモンテッソーリ教育の思想の中で重要なポイントだということです。

今回は日常生活の練習の中で紹介しましたが、これに続く全ての教具を提示するときにも適用されなければなりません。

 

モンテッソーリ講座記事:

モンテッソーリ教育講座1日目。モンテ概論。

モンテッソーリ教育講座2日目。0歳から3歳の発達。

モンテッソーリ教育講座3日目。環境と大人の役割。

モンテッソーリ教育講座4日目。運動の敏感期。

モンテッソーリ教育講座6日目。言語教育。

モンテッソーリ教育講座7日目。感覚教育。

モンテッソーリ教育講座8日目。芸術の活動。