人間はラクをしたい生き物であり、ラクして一生過ごすことができればなんて幸せだろうと思いますが、中々そうはいきません。どうしてでしょうか。

ラクをするということ

人間が最もラクしている状態のうち、最も分かりやすいのは睡眠中の状態です。睡眠をしている状態では人間の体は脳を休息させています。脳は人間の体重のうち約2%ほどの重さしかないにも関わらず、消費するエネルギーの割合は、全エネルギーのうちの18%を占めるという、非常にエネルギーコストの高い器官です。眠ることによって定期的に意識レベルを下げて休ませ、その間に脳の点検・管理を行っています。

活動中の脳

起きている状態でも、脳の消費エネルギー量は体の状態によって変化します。必死になって何かに集中した状態を継続したとき、頭の中が暑くなった経験はありませんか?これは、コンピュータのCPU使用率が100%に張り付いたときに、ファンが音を立てて高速回転するほど内部温度が上昇した状態に似ています。この時、脳はフル回転している状態であって、最もエネルギーコストの高い状態です。

感情の起伏

好きなことに熱中するときなどは、感情が正の方向に向いて脳が100%回転している状態ですが、ベクトルが負の方向に向くこともあります。人に冷たく当たられたりケンカして嫌な気持ちになった時、人の中には負の感情が渦巻きますがこの時も脳は100%回転している状態です。すなわち、脳が消費するエネルギーコストの観点ではそれが正の方向か負の方向かは関係ないのです。

平穏をもたらす状態とは

起きている状態で脳が最もエネルギーコストが低い状態とは、感情の起伏が全くなく思考が完全に停止している状態です。脳の観点から言うと、この状態が起きている間できるだけ長く持続することができれば、最もエネルギーコストが低くすなわちラクをしている状態を作り出すことができます。

人間の生産性

しかし、問題なのはこの脳の思考が停止している状態は人間の生み出す生産力が最も低い状態にあるということです。残念ながら地球上では、生産力が小さい個体ほど淘汰される運命にあります。ジャーナリストのジャレド・ダイヤモンドは、ニューギニアの友人ヤリから受けた「なぜ、ヨーロッパ人がニューギニアを征服し、ニューギニア人がヨーロッパを征服しなかったのか」の質問に、著書”銃・病原菌・鉄“を通じて「人類発祥の地アフリカからの距離」と「東西に長いユーラシア大陸の地理」がその原因であると結論づけています。すなわち、人間同士の衝突による戦争・融合・離散の繰り返しをいかに早く始め、いかに短期間に多数繰り返したかが文明の命運を分けたということです。そこに、人種や地域間の個体の能力の差は関係ありませんでした。

まとめ

人体は、何も意識しなければ脳がエネルギーコストの低い思考停止状態を求めていきます。そして、この結果淘汰の危険性が高まります。すなわち、我々に唯一の越された選択肢は、意図的な脳の活性化を「いつ」「何回」発生させるかを決めることだけなのです。あとは、自分が生きる寿命の中で自らの身に自然の淘汰が降りかからないことを祈るのみでしょう。

そして将来、文明が発達するにつれ人間の寿命は伸びていきますし、自身の示した生き方は次世代に伝播するということも忘れてはなりません。