
モンテッソーリ教育講座の3日目は子どもをとりまく環境と、接する大人の役割について学びます。
2日目以前についてはこちら
登場人物
子どもの世界に登場するのは『環境』と『大人』です。
環境は物的環境ですね。人ではありません。
しかし、子どもの精神に直接語りかける重要なアクターです。
環境
環境は誰の周りにも必ず存在しています。
その量は多くの場合それほど変わりませんが、重要なのはその質です。
ものが語りかけてくるとでもいいましょうか。
子どもが思わず触りたくなるものになるべく多く囲まれていることが非常に重要になってきます。
その質の主要要件は以下の3つです。
① 自発的活動が可能であること
子どもがひとりで扱えて、作業を完結できることです。
サイズ、設置位置、重さの3つが子どもの体格にあわせて作られていることが必要です。
② 用途ごとの分離
「食事」「睡眠」「活動」「お世話」の4分類に環境を物理的にわけて、それぞれが孤立している必要があります。
お世話は基本的に排泄ですね。
良く考えてみれば大人だって、トイレで食事をしたりしませんし、リビングで寝てしまうのには罪悪感を感じると思います。
新生児のときがあまりにも神秘的に見えるものですから、ついつい子どもは対象外と考えてしまいがちなのですが、彼らも同じ人間です。
大人が嫌がることは、子どもだって嫌なのです。
③ 発達段階に応じて変更
子どもの発達において、重要なマイルストンがいくつかあります。
それに応じて環境を変更してことが必要です。
第一段階:新生児〜
ハイハイが始まる前の、基本的に動けないことを前提とした環境です。
この時点での発達で最も比重が高いのは眼球の動きです。
前回紹介ような視力の低さも考慮しつつ、できる限りキョロキョロしてもらうための工夫が必要です。
例えばベビーベッドは、柵が視界を遮るので、布団の方が好ましいということです。
第二段階:ハイハイ&お座り以降(5ヶ月頃〜)
お座りができるレベルになると、平面はどこでも移動できるようになります。
この時点で導入されるのは、高さ10cm程度のずり這いでも上り下りできる段差やスロープです。
また、ガラガラなど徐々に手首のスナップなど手足の末端の細かい動きに対応した用具も準備していきます。
第三段階:歩行開始以降(10ヶ月頃〜)
つたい歩きができるようになると、歩行の訓練になるようなものを設置します。
また、立ったり座ったりを練習できるような低い机や椅子も必要になってきます。
歩行の訓練になるのは、ずって押すことのできる重いものです。
モンテでは円形のスツールが推奨されています。
こんな感じ。
中にペットボトルの水などを格納して、簡単に倒れないように重くします。
歩行器なんか買うよりも、場所も取らないし値段も安いです。
第四段階:歩行安定以降(18ヶ月頃〜)
自立して歩けるようになって、方向転換や走る動作などが自然にできるようになって以降の時期です。
人間らしい動作は一通りできるようになっているので、洋服を着替えるための収納やトイレ時などの衣服の着脱ようのベンチなどを設けます。
基本的に、大人が日常生活でする基本的な動作を練習するのを助ける用具を設置していきます。
第五段階:動作完成後(36ヶ月頃〜)
3歳頃になると、ほぼ小さな大人と言えるほど見た感じの動作は完成されます。
これ以降は、細かい動きの精度を調整するのを助ける道具を用意していきます。
ホウキで集めたホコリを丸く囲ったエリアに入れるとか、そういう類のものです。
大人の役割
これまでが、ものによる環境であったのに対して、次は人的環境です。
基本的には、両親か保育園の教師が該当します。
いずれもすでに存在しているはずなので、重要なのはその接し方です。
第一回目の概論のところでも簡単にふれましたね。
信頼する
以下の点は、これまでにも説明した通り、科学的にも証明されていますので疑うことはしません。
- 子どもは自発的
- 子どもは主体的
- 子どもは自らの力で育つ
いや、うちの子にはそんな能力は……なんてことは絶対にありません。
受け入れる
まず最初に必要なのは受容です。
子どもがどんな状態であろうと、今の子どものありのままをそのまま受け止める勇気をもつということです。
子どもの現在は、過去の積み重ねの結果なのです。
「隣の◯◯ちゃんはもう寝返りが打てるようになったのだから、あなたにもできるはず!どうしてできないの!」というような接し方は、相手のことを見ていません。
事実できないのは、できないのだから今はどうしようもないのです。
重要なのは「どうしたらできるようになるのか、一緒に考えよう!」という姿勢です。
ときには、これまでの自らの接し方が原因だと認める必要も出てくるので、簡単なことではありません。
敬意を示す
大人が大人に接する時のように、敬意を示すことです。
- 微笑みかけ、挨拶をしましょう
- いきなり要件だけ伝えるのは失礼ですよね。
- 間違いを許してあげましょう
- 誰でも間違います
- これからどうやって改善していくかに目をむけましょう
- 自分の過ちを認め、謝りましょう
- 大人でも間違えることがあります
- 言葉がわからないからといって隠さず、謝りましょう
- 結果ではなく、過程を重視しましょう
- ちゃんと見ていてくれるという信頼感の形成につながります
- 自分をさらけ出しましょう
- 理想を追い求めすぎないようにしましょう
- 急に聖人にはなれません
提示する
提示は、モンテッソーリ教育の重要な要素です。
子どもができることを、なんでも代わりにやってしまう管理主義や、手本すら見せてやらない放任主義では子どもは育たないということです。
その方法論を聞いた時、誰よりも戦争に最も反対した男と呼ばれる日本の海軍司令官、山本五十六の言葉が思い浮かんだので紹介しておきます。
やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、
ほめてやらねば、人は動かじ。
子どもに対しても同じだということです。
重要なのはとにかく辛抱強く待つこと。
一回の提示でうまくできることはありません。
何回も何回も、子どもが満足するまで付き合ってあげる心の余裕が必要です。
他のことを素早く終わらせて子どもとの時間を確保するための要領の良さが求められます。
まとめ
思ったよりも心構え的なところが中心となりました。
環境は科学で構築し、子どもには人間力で接するということですね。
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