
モンテッソーリ教育講座の2日目は幼年期の前半、0-3歳の子どもの発達のしかたについて、詳しく学習していきます。
1日目についてはこちら
習得済みスキル
0歳の時点ですでに習得済みの技能があります。
それは、自己教育力(auto-education)です。
これは例外なく誰でも持っています。
その証拠は、彼らが生きた状態でこの世に誕生してきたということです。
この能力がなければ、急に液体の中から大気に晒されたときに、呼吸ができずに絶命してしまっていたでしょう。
子どもが生きる目的
突然ですが、わたしたちは何のために生きているのでしょうか。
自己実現のため?家族の幸せ?
大人のそれは、十人十色でしょう。
しかし、6歳以下の子どもたちにはたった一つの理由しかありません。
それは、発達を遂げるためです。
これから迫り来る人生の荒波を乗り越えるために、この目的を必ず達成しなければならないという遺伝子の声を聞いているのです。
その目的を達成するのを最大限支援するためのひとつの答えがモンテッソーリ・メソッドです。
脳科学
発達とは何でしょうか。
脳科学では『神経細胞(ニューロン)どうしが繋がり、電気信号が流れる状態』になること、と定義されます。
この発達の結果は人によって異なっていて、それが大人になったときに得意なこととして現れます。
大人になってからこの能力を測るテストは、ストレングス・ファインダーが有名ですね。
ニューロン間の連絡通路が太く強いところは、その人の強みとなって現れ、結合が弱い人と比べると何倍ものスピードで苦もなく物事を処理できるようになります。
このニューロン間の連絡通路を強化する唯一の方法が、自発的な取り組みの繰り返しです。
なんどもなんども同じことを繰り返すことによって結合を強化します。
道端の砂利を拾って反対側の溝に入れる動作を、何十回もずっとやり続ける子どもは『石をひろう、運ぶ、溝に入れる』という動作を構成するニューロン間の連絡通路を作っている最中です。
「1回やったからもうやったからいいでしょ!」と遮ってしまうのは筋違いなのです。
「ちょっと待って!まだボクのニューロンは繋がっていないよ!」と声なき声で子どもは叫んでいます。
0-3歳の敏感期
0-3歳の間に必要な発達を遂げるために、子どもに現れる敏感期は以下の4つがあります。
- 言葉の敏感期
- 運動の敏感期
- 感覚の敏感期
- 秩序の敏感期
この敏感期に対応するように、モンテッソーリ教育は以下のようなタイミングで環境を準備します。
- 話し言葉の教育(0歳〜。言葉に対応。)
- 粗大運動の教育(0歳〜。運動に対応。)
- 微細運動の教育(6ヶ月頃〜。運動に対応。)
- 日常生活の練習(1歳半頃〜。運動に対応。)
- 感覚教育(2歳〜。感覚の課題に対応。)
秩序の敏感期に対応する教育カテゴリはありません。
それぞれの教育の中で秩序の要素を散りばめていく形になります。
科学的知識
この段階の幼児に接するにあたって、押さえておいた方がよい科学的な知識がいくつかあります。
性差
現代は男女平等な世の中といわれますが、それは政治の世界の中での話です。
生物学的には男女には非常に多くの違いがあります。
それは優劣ではなく、得意・不得意といった方が適切でしょう。
例えば以下のような特徴があります。
- 男の子の特徴
- 危ないことが好き
- 競争心が強い
- 固執する
- 空間認識力が強い
- 衝動的
- 動きまわるのが好き
- 動く物が好き
- 論理的思考
- 大きな動きの運動が好き
- 女の子の特徴
- 言葉数が多い
- 表情豊か
- 色彩感覚に優れる
- 人間関係構築力が高い
- 温和
- 他人を優先する
- 長続きする
- 集団生活が得意
- 細かい動きの運動が好き
男の子と女の子で好む行動と好まない行動がわかれますので、興味の対象を選定する際に意識するとよいでしょう。
目
子どもの目で見る世界は、大人とは違います。
精神的な話ではなくて、事実見え方が違うのです。
視力が低い
生まれた当初は視力が低いです。
また、いきなり良くはならず、以下のように段階的に向上していきます。
- 新生児:ほぼ見えない
- 3ヶ月:0.01
- 6ヶ月:0.02
- 8ヶ月:0.1
- 1歳:0.2
- 2歳:0.4-0.6
- 3歳:0.7-0.9
- 5歳:1.0
視野角が狭い
視野角は目で見える上下左右の角度範囲のことです。
横の方まで見渡すことができると、広い範囲から情報を得やすくなる一方、ある一点への集中力が低下するというデメリットもあります。
- 左右(水平):大人150°、子ども90°
- 上下(垂直):大人120°、子ども70°
視線の移動が多い
視野角が狭い代償か、視線移動の回数は大人と比べてはるかに多いです。
興味ある対象を環境から探すために、貪欲に視線を動かしています。
同じ方向を見ていたとしても、カメラのフォーカス位置を変更するかのように奥行き方向にも視線を次々と変えており、落ち着きがないです。
視野角の狭さも相まってか、上下左右から急に子どもの視線にカットインすると、過大に驚かせてしまいます。
子どもに近づく時は、遠くから目線があったのを確認してから、ゆっくり近づくと親切でしょう。
まとめ
モンテッソーリ教育の最終的な目的は、社会に適応した子どもを育てることです。
ここで紹介した子どもの科学的事実を踏まえて、それらをうまく利用して現在の社会に適応させていくための方法論です。
逆説的ですが、現在の社会の仕組みにないものを開拓する異端児は、この教育法からは生まれないのかもしれません。
モンテッソーリ教育には賛同の声もある一方、批判も多く寄せられています。
それは、上記のような観点に基づくものです。
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