
スクラムという単語をご存知だろうか。そう、あのラグビーで使われるがっつり肩を組んだ状態のことだ。しかし、ここで言っているのは製品開発に代表されるビジネスでの話だ。
スクラムは「そのプロジェクトの現状を把握するためのフレームワーク」のことで、「組織論」と「集団心理」の理解を大切にし、理論が組み立てられている。
「組織」というと、きっと多くの人の認識ではマーケットにもっとも近い製品のオーナーとしてその組織の社長やCEOが居て、その下に部長・課長・係長・平社員・・・とビラミッド上に広がっている状態のことが思い出されるのではないだろうか。そして、それを”どう区切るのが最も適切か”をあーでもないこーでもないと論ずるのが組織論だった。昨今だと、東芝の不正会計が起きた原因を、事業部制を敷いた組織の欠陥に求めた言説が新聞紙面を賑わせたのが記憶に新しい。
しかし、スクラムが支持する組織論はこの旧来の組織論のことではない、いわば”逆三角形”の組織論である。そのことを旧来の組織論と区別して”チーム・ベースド・オーガニゼーション(TBO)”と呼ぶ。
その定義はビジネス辞書によると以下のようにある。
その目的を達成するためにチームに依存する、非伝統的で革新的な職場環境のこと。その主な特徴として以下の5つが含まれます。
- チーム内メンバ間に相互の信頼がある
- (計画、組織、ゴール設定における従業員の生産性を向上させるために)チームが主導権をとり意思決定を行っていく習慣がある
- チームの自己管理のために共有された義務がある
- チームに割り当てられたタスクの完遂度・正確性・生産性に対し説明責任がある
- 共有されたリーダーシップ
ここでいう、チームとは世に出す製品を実際に作っている旧来のビラミッドのもっとも下層に位置する人々のことだ。これらが”非伝統的で革新的”なのであれば、逆に”伝統的で保守的”なのは以下のような職場環境にあるチームのことを言う。
- チーム内メンバ同士は信頼しあっていない
- チームが主導権をとらないで、意思決定をしない
- 自己管理は個々人でもち、共有の義務がない
- タスクの完遂度・正確性・生産性に対し説明責任がない
- リーダーシップが共有されない
どうだろうか、伝統的で保守的な職場環境は。『なんてラクなんだろう、でもつまらなそうだ』。そう思った人が多いに違いない。そう、すなわちラクだけどつまらない環境はこれからの21世紀を通じて持続可能ではない、滅びる運命にある職場だと心得よ、という教訓である。