これまで紹介してきた暗号通貨は、インターネットを経由して全世界に公開されているブロックチェーンであり、これはパブリックチェーンと言われています。

例えばビットコインのブロックチェーンには以下のURLから誰でも情報にアクセスすることができます。

 

外部リンク:Bitcoinブロックエクスプローラー

 

ちょうどこの記事を書いているのが、2017年10月18日の夜の時点ですが、現在のブロックの高さは「490,640」となっています。

「トランザクション」の項目を見ると、これまでに行われたひとつひとつの取引全てを見ることができます。

 

 

上から2番目の取引では、1から始まる2つのウォレット間で、左から右に$10.72相当のビットコインが送信されたことがわかります。

一番上の取引は新たなコインの生成であり、マイニングに成功したウォレットに送られるマイニング報酬です。

現在のマイニング報酬は、$74,102.53なので約835万円相当となかなか巨額の報酬であることがわかります。

 

このように名前や住所などの個人情報はわからないものの、ウォレットのアドレスと取引額が過去に渡って全てわかるのがパブリックチェーンの特徴です。

 

プライベートチェーン

パブリックチェーンに対して、ある特定の団体内だけで使えるプライベートチェーンという概念があります。

場合によっては、複数組織間で使うのをコンソーシアム型といったりしますが、原理的にはどちらも同じプライベートチェーンと言えるでしょう。

ちょうど、インターネットに対するイントラネットのようなイメージです。

各ノードが公開されたインターネット上に配置されておらず、運営する企業等が管理下におきます。

世界中の金融機関が連合を組んだり、実証実験をやったりしているのはほとんどがこちらのプライベートチェーンであり、目的はサイバー攻撃への耐性の強化や運用コストの削減といったところでしょう。

プライベート型の場合、ノードを使うユーザを管理・制限することができるため、不特定多数が利用するパブリックチェーンと比べるとコンセンサスがある程度容易で、その分処理性能の方に振り向けることができます。

 

今回は、日本の企業が取り組んでいる事例を3つ調べて見ました。

 

miyabi(雅)− bitFlyer

国内最大の暗号通貨取引量を誇るbitFlyerが開発したブライベートチェーン製品がmiyabiです。

報道発表の内容を見ると「BFK2」と呼ばれる独自のコンセンサス・アルゴリズムを導入しているのがポイントのようです。

BFK2の詳細はわからないのですが、「Paxosをベースとしている」という発言から確定合意型のコンセンサス・アルゴリズムなのではないかと思われます。

ビットコインのPoWなどは確率合意型と言われており、取引が覆される可能性を限りなくゼロに近づけたけどゼロではないということです。

PoWの場合は計算量の勝負なので、宇宙的性能をもつ量子コンピューターが誕生した場合には改ざんが行われる可能性が高まることが心配されています。

確定合意はファイナリティとも呼ばれ、「この取引は100%完了」とはっきり言えることが銀行にとってはどうしても必要なので、こちらの方が好まれるのでしょう。

トランザクションの処理性能は1,500tx/sと世界最速レベルであり、全銀協との実証実験プロジェクトも始まっています。

確定合意型の場合に問題となるのはネットワークが肥大化した場合に性能が維持できるかどうかであるため、実証実験の結果が気になるところです。

 

mijin(微塵)− テックビューロ

国内3番手の暗号通貨取引所Zaifを運営するテックビューロが開発したプライベートチェーン製品です。

テックビューロは暗号通貨NEMのコア開発者を有しており、パブリックチェーン型のNEMと共通のコアを使ってプライベート型にしたものがmijinということです。

miyabiとは逆に確率合意型のコンセンサス・アルゴリズムを採用しており、NEMと違ってプライベート型の場合はPoSを採用しているとのことです。

ブロックチェーン製品としてはかなり早期にリリースされたもので、すでにいくつかの実証実験や商用運用を開始しており、製品としては完成しているのでしょう。

現在の処理性能は1,000tx/sですが、NEMの次期アップデートCatapultにあわせてmijinのアップデートも予定されており、その際には4,000tx/sまで性能向上する見込みとのことです。

クレジットカードのVISAの性能がだいたい4,000tx/sに相当するらしいので、ほぼ世界的な決済システムとして動ける水準にあると見ていいでしょう。

問題はやはり決済業務に使うには、取引が99.9999..%覆らないとは言え、確定でないものを消費者が受け入れられるか?という感情の部分に帰着するように思います。

そこまで取引の厳密性が必達要件とならない企業内の情報システムであれば、導入もしやすそうで魅力的な選択肢になるのではないでしょうか。

 

Iroha(いろは)− ソラミツ

IrohaはブロックチェーンのオープンソースプロジェクトHyperledger(ハイパーレジャー)をベースに開発されている製品です。

ソラミツ社はNEMに導入されたPoIのリードエンジニアであった武宮誠氏が率いているということでも有名です。

訂正:武宮氏はNEMのリードエンジニアではなく、コーディングよりもマーケティング方面で貢献していたメンバーのひとりという立場であることが、NEM財団の声明で出されていました。

 

独自のコンセンサスアルゴリズムSumeragi(スメラギ)が導入されており、確定合意型のファイナリティを有するタイプのものです。

このアルゴリズムの中にHijiri(ヒジリ)と呼ばれるサーバ評判システムを導入しており、「メンバーシップに登録された時間」「成功トランザクション数」「障害発生数(マイナス評価?)」で優先的に処理するノードを決めることで、確定合意型の欠点である性能を向上しようという試みのようです。

地域通貨での実証実験も行われており、アプリケーションの作りやすさを考慮してAndroid, iOS, Javascriptのライブラリも用意するなど開発者向けのサポートも手厚く、今後の広がりが期待できる製品です。

性能は秒間数千txを目指しているということです。

 

まとめ

なんだか、和を意識させるネーミングの製品が多いですね。

日本企業は元気がないと言われて久しいですが、仮想通貨大国と呼ばれることも頷けるほどブロックチェーン界隈は世界レベルのポテンシャルを感じますね。