スペイン、カタルーニャ州の独立を問う住民投票で、賛成派が90%を超えたというニュースが報道されました。

カタルーニャ住民投票「独立賛成」90%、警察と衝突で844人負傷 ー ロイター通信

 

昨今は北朝鮮のミサイルがしょっちゅう発射されたり、世界的に緊張が高まっているのを平和ボケの国と呼ばれたこの日本にいてもひしひしと感じるようになってきています。

思えば2010年に始まったアラブの春からこの流れはずっと続いているように思います。

 

世界の再編

ベルリンの壁が崩壊したのは1980年代の終わり。

わたしの世代が育った1990〜2000年代はある意味、凪のような時代だったように感じられます。

湾岸戦争や同時多発テロと、それに繋がるアフガニスタン・イラク戦争と、非常に大きな事件もあったのですが、「アメリカさんが勝手に暴れてるな」という、どこか遠いところで起きている出来事のように思われてなりませんでした。

 

人類は過去の過ちを省みて進化し、平和の道を歩み始めている。

過去の戦争の悲惨さは学校でも習ったし、広島の原爆ドームも見学した。

戦争はよくないっていう趣旨の映画も、アニメも、ゲームもたくさん見てきた。

技術は進歩し、インターネットで簡単に世界中の友人と繋がれるようになった。

昔の人は頭はよかったかもしれないけど、視野が狭かったに違いない。

第一、自分のまわりは平和だ。これからも大丈夫。

…というようなストーリーを、都合よく作り出していたように感じます。

 

しかし2010年頃からの流れは、世界中が呼応して、全体が騒ぎ出しているような不気味な雰囲気を感じます。

誰もがインターネットを使うようになって、今まで見ることのできなかった情報がほぼすべての人々に知れ渡り、国や大企業の力が相対的に弱くなり、個人や小さな組織が力を持つようになったからでしょうか。

また世界は激動の時代に向かっていってしまっているのでしょうか?

そんな折、ひとつの本に出会いました。

 

コペル君とおじさんの話

「君たちはどう生きるか」というタイトルの本なのですが、中学2年生のコペル君と、亡くなった父親の代わりに彼の生きる道しるべとなるおじさんが主役の小説です。

わたしは今回初めて知ったのですが、社会科学の分野で歴史的名著といわれています。

 

物語は少年のコペル君が見た日常のできごとに、おじさんが日記で語りかける形式ですすんでいきます。

コペル君は、銀座のデパートの屋上から見える雨の日の東京の様子を、「人間分子の海」と言っちゃうような、ちょっと達観した少年です。

背も小さいという設定なので、なんとなく名探偵コナン君を想い起こさせますね。

それに呼応しておじさんも、「そうさ。毎朝郊外から満員電車で通勤して帰っていく人たちの流れも、いわば潮の満ち引きのようなものさ。」というように答えます。

おじさんもコペル君以上に、学者のような浮世離れした人間です。

 

文体はとても自由で、ヒューマニズムにあふれたものとなっています。

高度にグローバル化された今の時代に読んでも、違和感を感じさせません。

さすが歴史的名著ですねー。一体いつの時代に書かれたものなんでしょうか……

 

 

なんと1937年。今からちょうど80年前です。

 

1937年といえば、日本が太平洋戦争に突き進むほんの数年前の時代のことです。

これを聞いてどうでしょう。

わたしは、恐ろしいと思いましたね。

このように自由で、人間味溢れる文学をかける人たちが、数年後にはあのような戦争に突き進むと考えると、決して今の時代も安泰ではないように感じられます。

 

まとめ

この本の最後は、タイトル通り「君たちは、どう生きるか。」という著者からの問いかけで締めくくられます。

この問いかけは、当時すでに軍国主義が台頭し、閉塞感が漂っていた世の中で、少年少女に向け贈られた言葉ですが、今の時代を生きるわたしたちにも重く感じられます。

80年前とそれ以降の歴史を振り返ってあらためて、これから80年先の未来を想像してみるのもよいでしょう。

 

偶然ですがちょうど先月、漫画版が出ているようです。

こちらも評判がよいようなので、読んでみようかな。

 

漫画 君たちはどう生きるか - 吉野源三郎、羽賀翔一